教科書プロジェクト

新しい教科書の使用例

 この教科書は米国をはじめ世界の殆どの大学で採用されているカリキュラムを参考に,我が国の環境に適応するようにグローバルスタンダードな “Calculus” コースとして作成した.授業時間数は90分の授業を週2コマ×16週で1学期として3学期間のコースである.(ただし,米国の50分授業=我が国の1コマの1/2 (=45分)に換算したので,我が国の方が1学期間で320分少ない.)米国ではトップスクールからコミュニティーカレッジに至るまでほぼ一律にこのカリキュラムが採用されている.これは,入学時のプレースメントテストで基礎力が不十分な学生は Precalculus の受講が義務付けられ,このコースにパスすることが Calculus 受講の条件になっているため,このように受講者の学力を揃えることで一律の共通カリキュラムが組めるのである.

 我が国の場合は大学入学者選抜形式によって入学生の学力に差があり,Precalculusを正規の大学の科目として認めていない大学が多く,そのために入学者の学力の度合いによって教科書の使用法に差が生じることはやむを得ない.そこで,全理系大学入学生を母集団として

「カテゴリーA」:数学の成績のトップ15%の学生を主な構成員とする大学またはクラス

「カテゴリーB」:次のトップ15%~50%の学生層を主な構成員とする大学またはクラス

「カテゴリーC」:主にトップ50%以下の学生層を構成員とする大学またはクラス

のように分類する.それぞれ概ね,旧帝大・上位私大,中堅国公立私大,その他の地方公・私立理系クラスに相当すると考えてよい.ただし,実際は入学時の学力診断によって能力別クラス編成を実施する大学も多く,ひとつの大学でも複数の型のコースを設定することも視野に入れている.以下において,それぞれのクラス毎に使用例を提案する.各§の内容がほぼ1コマの授業に対応すると考えてよい.(ただし,中には1コマで講義出来ない内容の§も含まれているが演習や予備の時間での調節が可能.)

A. カテゴリーAのクラス

 このレベルの学生は高校数学の基礎が出来ているため,Chaper 1 の大部分が省略でき,また微分方程式やベクトル解析が必修科目として用意されているので,これらを除いた内容を2学期間で学習することが可能である.(ただし,変数分離形は学習する.)

1st 学期 Calculus Ia(1変数微分積分)
  講義・・・Chapter 1 について2コマ(大学数学の記法,関数・合成関数・逆関数等の
       厳密な取り扱い,双曲線関数,逆三角関数等の高校では学習しなかった題
       材を中心に講義する)
       Chapter 2 §2.1~§2.3
       Chapter 3 §3.1~§3.4
       Chapter 4 §4.1~§4.4
       Chapter 5 §5.1~§5.4
       Chapter 6 §6.1~§6.3
       Chapter 7 §7.1~§7.4
       計24コマ
  演習・・・各Chapter毎に1回,計6コマ
  試験・・・1コマ
  予備・・・1コマ
  合計・・・32コマ

2nd 学期 Calculus IIa(級数と多変数微分積分)
  講義・・・Chapter 8 §8.1~§8.4
       Chapter 9 §9.1
       Chapter 10 §10.1~§10.4
       Chapter 11 §11.1~§11.5
       Chapter 12 §12.1~§12.6
       Chapter 13 §13.1~§13.4
       計24コマ
  演習・・・各Chapter毎に1回,計6コマ
  試験・・・1コマ
  予備・・・1コマ
  合計・・・32コマ

B.カテゴリーBのクラス

 このクラスではこの教科書通りのグローバルスタンダードなカリキュラムで教えることを勧める.
1st 学期(Calculus I)
  講義・・・Chapter 1 §1.1~§1.5
       Chapter 2 §2.1~§2.3
       Chapter 3 §3.1~§3.4
       Chapter 4 §4.1~§4.4
       Chapter 5 §5.1~§5.4
       計20コマ
  演習・・・講義3回毎に1回,計7コマ
  応用プロジェクト・・・2コマ
  試験・・・2コマ(中間試験+期末試験)
  予備・・・1コマ
  合計・・・32コマ

2nd 学期(Calculus II)
  講義・・・Chapter 6 §6.1~§6.3
       Chapter 7 §7.1~§7.4
       Chapter 8 §8.1~§8.4
       Chapter 9 §9.1~§9.5
       Chapter 10 §10.1~§10.4
       計20コマ
  演習・・・講義3回毎に1回,計7コマ
  応用プロジェクト・・・2コマ
  試験・・・2コマ(中間試験+期末試験)
  予備・・・1コマ
  合計・・・32コマ

3rd 学期(Calculus III)
  講義・・・Chapter 11 §11.1~§11.5
       Chapter 12 §12.1~§12.6
       Chapter 13 §13.1~§13.4
       Chapter 14 §14.1~§14.5
       計20コマ
  演習・・・講義3回毎に1回,計7コマ
  応用プロジェクト・・・2コマ
  試験・・・2コマ(中間試験+期末試験)
  予備・・・1コマ
  合計・・・32コマ

C.カテゴリーCのクラス

 このクラスの大学では推薦入学者の比率が高く,Chapter 1 において基礎数学の復習を数コマ追加する必要がある.(さらに,プレースメントテストの成績が下位の学生については最初に「基礎数学(Precalculus)」を学習してからこのコースを学習することを勧める.)従って,最初の学期は「微分法とその応用」を Calculus Ic,2学期目は「積分法とその応用」を Calculus IIcとして学習し,3学期目は選択(専攻によっては必修)科目として Calculus III を学習すするか,またはCalculus IIIc(積分定理を除く)を学習することができる.

1st 学期(Calculus Ic)(微分とその応用)
  講義・・・Chapter 1 §1.1~§1.5+Appendix B&C(4コマ)
       Chapter 2 §2.1~§2.3
       Chapter 3 §3.1~§3.4
       Chapter 4 §4.1~§4.4
       計20コマ
  演習・・・講義3回毎に1回,計7コマ
  応用プロジェクト・・・2コマ
  試験・・・2コマ(中間試験+期末試験)
  予備・・・1コマ
  合計・・・32コマ

2nd 学期(Calculus IIc)(積分とその応用)
  講義・・・Chapter 5 §5.1~§5.4
       Chapter 6 §6.1~§6.3
       Chapter 7 §7.1~§7.4
       Chapter 8 §8.1~§8.3(§8.4を除く)
       Chapter 9 §9.1~§9.4(§9.5を除く)
       Chapter 10 §10.1~§10.2(§10.3~§10.5を除く)
       計20コマ
  演習・・・講義3回毎に1回,計7コマ
  応用プロジェクト・・・2コマ
  試験・・・2コマ(中間試験+期末試験)
  予備・・・1コマ
  合計・・・32コマ

3rd 学期(Calculus III)(選択)または
  (Calculus IIIc)(多変数微分積分)
  講義・・・Chapter 11 §11.1~§11.4, §10.3, §10.4,§11.5
       Chapter 12 §12.1~§12.6
       Chapter 13 §13.1~§13.4
       Chapter 14 §14.1, §14.2,積分定理概説(1コマ)
       計20コマ
  演習・・・講義3回毎に1回,計7コマ
  応用プロジェクト・・・2コマ
  試験・・・2コマ(中間試験+期末試験)
  予備・・・1コマ
  合計・・・32コマ

(注)「微分方程式」についてはChapter 9 で必要最小限の項目を学習するが,各大学で用意されている選択(または必修)科目の「微分方程式」を追加履修することが望ましい.